自分の仕事が相手に喜ばれるために、どのような工夫ができるでしょうか。
ここでは、自分(あるいは自分たち)が提供したアウトプットとなる、商品、サービス、制作物、プロジェクトなどの成果物、資料や書類などについて考えてみます。
アウトプットに含まれる要件項目として、機能や仕様、予算、スケジュール、書式などが挙げられますが、予め要件が決まっているものと決まっていないものでは対応が異なります。要件が決まっている場合は、QCD(品質、コスト、納期)をいかに順守するかが重要となります。
一方、要件が決まっていない場合はどうすればよいでしょうか。一見要件が決まっているように見えても、実際はあいまいなケースもよくありますよね。例えば、提案書を作成する場合、①まずは相手の希望に答えること、さらに②相手の希望を超えて満足してもらうことが必要です。
相手の希望に答えるためには、できるだけ見えない要件を決めるべく、ヒアリングや会話などで希望や制約を知り、相手が期待する回答範囲や世界観を整理することで、読み手(相手)が受け入れやすくなることでしょう。相手や場合によっては、フォントや書類の書式などに配慮することも必要でしょう。
ただ、これだけでは競争相手との差をつけることができません。特に提案書作成の場合、相手が持っている希望や要件は競争相手も見えている場合が多いと思います。そこで②の相手の希望を超える満足感が必要となります。ここでは、2つのアプローチが考えられます。それは、提案書内容の短所をなくすこと、もう1つは提案書の長所を積み上げることが挙げられます。両方ができれば一番良いのですが、すべてをそのように対応できるものではありません。
私は、短所をなくすよりも、長所を積み上げることが重要だと考えます。作成者本人と相手の心理の相違の面から整理してみます。まずは作成者の心理として、短所は見つけやすく、長所の積み上げは作りにくいことが挙げられます。特に、作成者の周囲から責められないように短所をなくすことに目が向きがちです。ただ、これは相手の希望とは関係のない作業であることも多く、その努力が相手に届かないことも多いのです。一方、長所を積み上げることは、提案が必要となったポイントや作成者自身の想いが伝えられること、相手の想いと合致したときに共感が得られるためです。
ただ、長所を積み上げる行為は、コンテンツを作るための集中する時間をとること、相手が必要・重要だと考えていることを知り、さらに相手は無意識で気づいていないことを探し出すことが必要です。ただ、集中する時間をとるのは、期待をされれば多くの人とのやり取りが発生し、集中が分断されてしまう難しさがあります。また、本当に必要・重要なことを知ることも難しいことです。自分の周囲だけではバイアスがかかり、外部の世界とのコンタクトには時間とコストがかかり、自分の都合の良い声だけになってしまうからです。
そのため、短所をなくすこと時間がとられがちなのもこのあたりに理由がありそうです。
そんなことを考えながら読んだのが、小野和俊「その仕事、全部やめてみよう」です。
なかなか自分の手元の仕事を手放すのが難しいわけですが、効率的に生産性を上げていくためにはこのくらいの割り切りが必要になりそうです。